洪水の夜から怖くて…/お悩みQ&A

洪水の夜から怖くて…

7月に西日本で降った豪雨の夜、慌てて避難した直後、濁流と土砂が流れ込み自宅が全壊しました。大雨が降り終わって少しした頃から、濁流が押し寄せる夢で目が覚めたり、ふとした拍子であの夜のことをありありと思い出してしまいます。また川の流れる水音を聴くと、強い不安感が湧き上がってきます。こんな時はどうしたらよいでしょうか? 

(30代女性)

不安感や不眠が続く場合は病院に

伊藤高〔メディカルカウンセリングルーム いとうクリニック(高知市)院長 精神科〕

 今回の災害で土砂崩れや洪水などを目の当たりにして被災され、もしかしたら死んでいたかもしれないような体験、大切なものを全て失ってしまった体験をした結果、不眠や不安、体調不良、悲しい気持ちや憂うつな気持ちなどが、一時的に生じることがあります。これは正常な心身の反応です。それだけつらい経験をされたのですから、平静を保てなくて当然です。ほとんどの場合は数日で、これらの症状が消えていきます。
 一方、3、4週間を経ても、フラッシュバックと言ってその時の光景がありありと思い出されたり、あの夜のことを思い起こすような状況に置かれると非常に不安感が高まったりする方もいらっしゃいます。通常は被災後3日後から、遅くとも1カ月ぐらいの間に生じます。これを急性ストレス反応と呼び、これも多くの場合、自然になくなります。
 中には、これらの症状が1カ月を超えて長期化するケースもあります。この場合にはPTSD(心的外傷後ストレス障害)という疾患かもしれません。これは慢性化しやすいため、日常生活や仕事などに影響することが考えられます。もし、感じる症状が長引く時は、専門医療機関の受診をおすすめします。
 今は、少しでも安心・安全な場所で過ごすことが第一です。今後の生活の場が決まれば、お気持ちも楽になるかもしれません。もし不安から十分な睡眠が取れない状態が続くのでしたら、かかりつけ医でかまいませんので、相談されてみてはいかがでしょう。

(大阪府箕面市・教学寺門徒)

『本願寺新報』2018年8月10日号掲載