医師である住職として/つながる医療と仏教

医師である住職として

和泉いずみ 唯信ゆいしん 徳島大学大学院 教授

 西本願寺医師の会に入会させていただいたのは、亡くなられた備後教区宗会議員であった山下義円先生のおすすめでした。三次市・法正寺第18世住職であった父・和泉慧雲が山下先生と懇意にしていただいていたためと思います。現在、私は父から住職を継職するとともに脳神経内科医をしております。
 脳神経内科は脳神経外科や精神神経科に比べて知名度は低いのですが、実は対象とする疾患は両診療科に比べても非常に幅広く、脳卒中、認知症、頭痛、てんかんといった、患者数が多くよく知られた疾患から、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、筋ジストロフィーなどの神経難病まで対応しております。
 父は社会福祉に寄与したいという気持ちから、老人ホームを1974年から運営しておりました。私は住職になるという約束で北海道大学に進学し、将来は数学教師をしつつ住職をつとめると漠然と思っていました。1987年に父は脳出血を起こし、自身が病気になって、これまで感じなかった老人ホーム入所者の病気に対する不安に思い至り、病院設立を決心いたしました。そして北大在学中で教育実習のため帰省した私に「生きた人に教えを説く医師になれ」と強くすすめ、私も医学部への再入学を決意いたしました。
 父は命を削って奔走し、ビハーラ花の里病院を1991年に開院いたしました。病院理念として『大無量寿経』の「一切苦懼いっさいくく 為作大安いさだいあん」(病みて悩める人々の 安らぐ家とならむかな)を掲げ、表玄関の横に仏間(ビハーラ室)を設けました。関係のご住職にご協力をいただき、法話会を毎週開催しました。仏教婦人会の方々による院内清掃、物故者初盆法要の開催など、父の方法で「仏教の教えを生きている人へ」説いたと思います。
 私も医師になり今年で30年になりました。現在は大学教員として認知症、神経難病を中心とした診療、教育、研究を行っています。神経難病では特にALSに注力し、病態解明、治療法開発、臨床評価ガイドラインの作成などを行っています。ALS患者さんをはじめとした患者さんとの対話は、「わしは死んでもお前の中で生きる」と病の床で言い遺した父の願いの実践だと感じています。
 西本願寺医師の会の活動は、それぞれの医師の活動が異なるため、さまざまな内容があっていいと思います。仏教の慈悲の心を持ち合わせた医師が本会に多く入会され、その活動を大いに盛り上げられることを期待しています。

大乗2026年1月号掲載