排尿障害に風邪薬は?/お悩みQ&A

排尿障害に風邪薬は?

風邪を引いてしまい、ドラッグストアで市販の風邪薬を購入して服用しようとすると、説明書に「前立腺肥大症・排尿障害のある方は医師に相談してください」とあります。最近、尿の出があまりよくないので、注意が必要なのでしょうか?

(65歳男性)

前立腺の肥大には服薬の注意が必要

近藤 雅彦〔医療法人近藤クリニック(大阪市)理事長 泌尿器科専門医〕

 前立腺が肥大している人が 風邪 かぜ薬や花粉症の薬を飲むことで、尿が 膀胱 ぼうこうにたまっているにもかかわらず、排尿できない危険な状態(尿閉にょうへい)を引き起こすことがあるので注意が呼びかけられているのです。

 風邪薬や花粉症の薬には、膀胱の働きを弱める抗ヒスタミン剤が含まれており、膀胱にたまっている尿が出にくくなる作用があるためです。

 前立腺は男性の 生殖 せいしょく機能に関わる臓器で、男性にしかありません。膀胱の出口をドーナツのように取り巻き、その中を尿道が通っています。前立腺の大きさは通常は栗の実ほどで約20グラムです。前立腺は精液の一部である前立腺液を分泌し、前立腺液は精子を守っています。

 前立腺は、多くの人が年齢とともに肥大する傾向にあり、肥大するにつれて、尿道を圧迫するようになり、尿の出が悪くなったり、排尿障害の原因の一つとなります。

 また、風邪薬のほか、大量の飲酒、睡眠薬、抗うつ剤や胃薬の一部でも尿が出にくくなる症状を引き起こすことがあります。尿閉になりますと、尿道からゴム製のカテーテルという細い管を膀胱に入れて尿を出す導尿という処置が必要になります。

 このような尿閉状態が起こったときには、前立腺肥大症のみならず、前立腺がんの疑いもありますので、前立腺の腫瘍マーカー(PSA)という血液検査も必要になります。心配な場合は、かかりつけの医師かお近くの泌尿器科でご相談ください。

(鳥取県八頭町・光賢寺衆徒)

『本願寺新報』2018年4月20日号掲載