「緩和ケア」を勧められた もう治療はできないのか…/お悩みQ&A

「緩和ケア」を勧められた もう治療はできないのか…

がん治療病院の医師から「これ以上のがんの治療は難しい。これからは緩和ケアに専念した方がいい」と言われました。見捨てられたようで、納得がいきません。もう、治療することはできないのでしょうか?緩和ケアに移行しなければならないのでしょうか?

 

(60歳男性)

人間には生存本能があり「生きたい」思いは当然

月江教昭〔那珂川病院(福岡市)緩和ケア科医長 循環器内科〕

 がん治療病院の医師は、そろそろ抗がん剤治療も終了に近づいてきている、と思われる頃のタイミングで、緩和ケア病棟を有する病院を紹介します。

 緩和ケアを紹介されると、まずは、緩和ケア病棟の見学と内容説明があります。次いで、転院、外来での通院、在宅医療のいずれの希望なのか、当面は外来にも来る必要がない状態なのかなど、患者・家族からの希望を尋ねます。

 その際に、今回の質問者のような思いを抱く方もおられます。がんの保険診療で行われる標準的治療には、手術・放射線・薬剤の3種類があります。どのがんであっても最終的には薬剤治療になることが多く、薬剤はがん細胞もやっつけるが、自身の体力も奪うという諸刃の剣で、自分の体力が、がんの体力より低くなると、これ以上のがん治療はかえって自身の体力を奪い、寿命を縮めてしまいます(パフォーマンスステータス3以上では抗がん剤治療は行わない)。

 しかし、我々人間には生存本能があるのですから、どこまでも生きたいと思うのは当然のことで、質問者さんのように治療への思いが断ち切れないのも当然のことです。その際は緩和ケア面談後に、いきなり緩和ケア病院のみに転医するのではなく、がん治療病院との併診からはじめられることを提案しています。

※治療:一般に「治療とは病気が治る・完治する」という意味で使われるが、医療従事者が使うときは、「治療=医療行為」の意味で使われ、必ずしも病気が治るという意味で使ってはいない。

 

 (福岡市博多区・真教寺衆徒)

『本願寺新報』2019年1月10日号掲載