母は認知症でしょうか?/お悩みQ&A

母は認知症でしょうか?

75歳の母のことです。2年ほど前からもの忘れが出ています。銀行通帳や財布の置き場所を忘れ、家中を探し回ることが多くなりました。最近では、1週間前に行った家族旅行のことをすっかり忘れており驚いています。旅行に行った事実を母に説明しても、「毎日忙しいからよく覚えてない」と言って怒ります。母は認知症なのでしょうか?

(49歳女性)

「もの忘れ外来」での精密検査を勧めます

瀧本裕〔愛仁会千船病院(大阪市)脳神経内科 主任部長〕

 もの忘れ外来でよく尋ねられる質問に、「普通のもの忘れと認知症は、どう違うのですか?」というものがあります。

 「待ち合わせの日時を忘れてしまった」「人の名前が覚えられない」「デパートに行って何を買うのか忘れることがある」など、日常のもの忘れの体験を訴える方の多くは、もの忘れの体験をかなりよく覚えておられます。
 実は、このようにご自身の最近の出来事・体験を覚えているということは、認知症ではなく、年相応の「普通のもの忘れ」と思われます。

 「普通のもの忘れ」は、自分の体験の「一部」を忘れるのが特徴であり、待ち合わせの約束は忘れても、誰と約束したかは覚えています。デパートに行って何を買うのか忘れたとしても、デパートに行ったこと自体は覚えています。もの忘れはするものの、日常・社会生活において特に困ることは生じません。
 ところが「認知症」の方は、自分の体験の「全て」を忘れてしまいます。これをエピソード記憶障害といい、自分でもの忘れのエピソードを説明することができませんし、ご本人にもの忘れの自覚がないのが特徴です。
 さらに、薬の管理ができない、銀行からお金を引き出せない、電車に一人で乗れなくなるなど、日常・社会生活に支障が出てくるのが「認知症」といえます。

 ご質問の「1週間前の家族旅行を忘れている」のはエピソード記憶障害と考えられ、普通のもの忘れよりも認知症が疑われます。できるだけ早めに専門医の受診、精密検査をお勧めいたします。

 

 (兵庫県西宮市・光明寺門徒)

『本願寺新報』2019年2月20日号掲載