父に運転をやめさせるには?/お悩みQ&A

父に運転をやめさせるには?

89歳の父が、運転免許更新時に「認知症のおそれがある」と指摘され、病院でも「アルツハイマー型認知症の可能性が高い」と言われました。家族から運転免許証の自主返納を強く説得していますが、「俺は30年以上無違反だぞ!」と怒鳴り、運転を止めてくれません。免許証の自主返納を説得するには、どうすればいいのでしょうか?

(59歳男性)

やさしく丁寧に説得 医師や周囲の協力も

瀧本裕〔愛仁会千船病院(大阪市)脳神経内科 主任部長〕

 認知症の方は記憶力や判断力が低下するため、交通違反や重大な事故を起こす危険性があります。ところが認知症の方は、運転能力の低下や自身が認知症(あるいは疑い)であることを認めたくないため、自主返納の説得が大変困難です。
 認知症の診断を受けると免許証は更新されず、免許剥奪はくだつか自主返納を迫られます。自主返納をすれば身分証明書の代わりになる「運転経歴証明書」が交付され、自治体によってはバスやタクシー、お店の割引も受けられるため、まずは「運転経歴証明書」交付の利点を強調して説得してみましょう。
 それでも困難な場合、筆者が経験した対応例では、①医師から「運転禁止」と本人に伝えてもらう、②車を使えないように工夫する(車の鍵が無くなった、車が故障したことにする)、③高齢ドライバーによる自動車事故の新聞記事を本人に読んでもらう、などの方法もあります。根気が必要ですが、優しい口調で運転は危険であることを繰り返し丁寧に説明しましょう。
 車を止めて徒歩や公共交通機関を使おうなど、健康面を重視した説得も有効です。また、どうしても家族だけでは説得が困難な場合、地域包括支援センターや派出所、運転免許試験場に相談してはいかがでしょう。自治体によってはご本人に指導をしてくれるところもあります。
 くれぐれも「なんで同意してくれないの!」と家族が声を荒げるのだけは避けたほうが賢明です。

 

 (兵庫県西宮市・光明寺門徒)

『本願寺新報』2019年3月1日号掲載