認知症の薬は効くのですか?/お悩みQ&A

認知症の薬は効くのですか?

78歳になる母が、半年前にもの忘れ外来を受診し、「アルツハイマー型認知症」と診断されました。担当医より、「認知症の進行を遅らせる薬がある」と説明を受け、母は薬を飲んでいますが、正直効いているのかどうかがわかりません。認知症の薬は本当に効くのですか?

(54歳女性)

早い段階で使用すれば症状軽くすむことも

瀧本裕〔愛仁会千船病院(大阪市)脳神経内科 主任部長〕

 「治りますか?」と聞かれると「現在使われている認知症の薬は、症状を改善する効果はありますが、根本的に治す効果はありません。そのため、薬によって認知機能がやや改善しても、病気自体は次第に進行します。ただ、早い段階で診断して適切な薬を使えば、症状が軽い状態を維持することができるという報告があります」と答えています。
 現在使用される「塩酸ドネペジル」「ガランタミン」「リバスチグミン」は神経伝達物質のアセチルコリンの減少を抑える薬で、病気の進行を抑え、意欲向上の効果もあります。「メマンチン」は神経細胞の死滅を防ぎ、心を穏やかにさせる効果が示されています。
 医師はこれらの薬を患者さんの症状や状態によって選択しますが、単純に「これが一番良く効く」というものではなく、あくまで患者さんの個々の病状によって調整します。そのため、同じ認知症であっても、処方される薬が異なることがあります。
 記憶障害を改善するというよりも、むしろ「意欲を向上させる」「表情が明るくなる」という効果を期待して処方する例が多く、それにより前向きな気持ちで生活できることがあります。そうすると、介護する家族にも心理的な余裕が生じ、患者さんに丁寧に接するようになるなど、好循環が生まれます。
 いずれの薬も適正な投与量まで様子を見ながら少しずつ増量していきますが、勝手に薬を止めると一気に症状が悪化することがあり、危険です。できるだけ薬は家族が管理し、医師の指示に従って服用するようにしましょう。

 

 (兵庫県西宮市・光明寺門徒)

『本願寺新報』2019年3月10日号掲載