公衆浴場に息子(14歳)と行くと陰嚢の片側が膨れているのに気づきました。痛がる様子もないのでそのままにしておいて大丈夫なのでしょうか。
(45歳男性)
木下徳雄〔泌尿器科いまりクリニック(佐賀県伊万里市)副院長〕
ご質問だけでは詳しい症状がわかりませんが、「無痛性陰嚢内腫瘤」の可能性が高いと考えられます。
陰嚢は、精巣(睾丸)、精巣上体(副睾丸)などを包む袋です。この陰嚢内の臓器が腫れ痛みを伴わないのが「無痛性陰嚢内腫瘤」です。
まず考えられるのは「陰嚢水腫」です。これは精巣の周囲に水が溜まる病気ですが、多くは原因不明です。超音波検査で簡単に診断できます。小児では少ないですが、水腫が大きく生活に支障があれば手術が必要です。また鼠径ヘルニア(脱腸)を合併していれば早期の手術をお勧めします。
次に「精巣腫瘍」があります。これは稀な腫瘍ですが、20歳代後半から30歳代にかけて発症のピークがあります。痛みや発熱を伴いません。原因不明ですが、停留精巣や性分化異常などが発生に関連しています。悪性のことが多く、放置すると転移進展していきます。病理組織型によっては急速に腫瘤が増大し、転移するものがあります。そのため、精巣腫瘍の疑いがあれば準緊急手術で精巣摘除をします。転移があっても抗がん剤治療や放射線治療で多くは完治します。
痛みや発熱を伴うものは感染症(精巣炎、精巣上体炎)です。急激な痛みを伴うものに「精巣捻転」があります。発症後6時間を過ぎると精巣が壊死してきますので、緊急手術が必要です。
いずれにしても、一度、泌尿器科を受診されるのがよいでしょう。
(福岡県みやま市・光徳寺寺族)
『本願寺新報』2020年4月10日号掲載