ピロリ菌について教えて/お悩みQ&A

ピロリ菌について教えて

最近、胃のピロリ菌除菌の話を聞くことがよくあります。私もすすめられて除菌しましたが、ピロリ菌のこと、また今後気を付けることなどあれば教えてください。

(30代男性)

ピロリ菌の除菌後も定期的ながん検診を

高橋英雄〔高橋医院(富山市)院長 消化器内科/外科〕

 新型コロナ肺炎の収束の道筋が見えません。人類の歴史は感染症との戦とも言われますが、意外にがんの中にも感染症という位置づけのものが3つあります。子宮がん、肝臓がん、そして胃がんです。胃がんは昔、塩分が原因とされていましたが、今は小児期に感染したヘリコバクターピロリ菌によるというのが通説です。歴史上の大発見は思いがけないきっかけによることがありますが、このピロリ菌も1979年にオーストラリアの医学者によって研究中に偶然発見されました。そして2005年にはノーベル賞を受賞しています。
 さて、ピロリ菌感染率は高齢者ほど高く、一方で今の若年者は低いとされています。昔であれば井戸水、また赤ちゃんへの食事の口移しなどが原因と言われていますがよくわかっていません。ピロリ菌の治療は除菌療法と呼ばれ、決められた薬を1週間内服します。成功率は80から90%で、不成功の場合は薬を変えて2次除菌を行い、ほぼ成功します。保険診療で行う場合、早期胃がんの見逃しを防ぐため事前に胃カメラ検査が必要です。
 除菌に成功すればもう胃がんにならないという誤解がありますが、そのようなことはありません。徐々に慢性の炎症がとれ、がんになりにくい胃粘膜になりますが、除菌後にできる胃がんも注目され始めています。引き続き検診などは必要です。いずれ除菌する人が増え、また感染率の低い今の若年層ががん年齢になる数十年後には、胃がんは激減していると予想されています。

 

 (富山市・雲隆寺住職)

『本願寺新報』2020年5月1日号掲載