耳鳴り、何とかならないか/お悩みQ&A

耳鳴り、何とかならないか

数年前から「耳鳴り」に悩んでいます。セミのような声が一日中聞こえ、夜間に一度目が覚めるとなかなか寝ることができません。今年1月から耳鼻科で投薬治療を受けていますが、よくなりません(担当医は加齢もあり難しい病気とのこと)。投薬治療以外に何か改善のためにできることはないでしょうか。

(65歳男性)

静かな環境を避け入眠時は小さな音

安井俊道〔やすい耳鼻咽喉科(大阪府泉佐野市)院長〕

 「耳鳴じめい外来」の経験では、難聴が「耳鳴みみなり」の原因であることが多いですが、他の原因を否定するため必ず耳鼻科を受診しましょう。ご質問には「耳鼻科で加齢を指摘された」とあり、難聴に伴う耳鳴りとして回答します。残念ながら、現在の医療では、加齢性難聴などの持続的な感音難聴を改善できませんので、「耳鳴り」が完全に消えることはありません。ただし、「耳鳴り」に慣れることはできます。
 「耳鳴り」の主な原因は①脳が興奮状態である、②「耳鳴り」に意識を集中してしまう、ことです。①難聴は人間が生存する上で不利な状況(聞こえないと動物に襲われる)なので、難聴を認識した脳は、耳を働かせようと刺激を続け、興奮した状態となり「耳鳴り」が生じます。②「耳鳴り」に意識が集中する→「耳鳴り」を脳が認識する。「耳鳴り」を認識する→意識が集中する。この悪循環が耳鳴りを生じさせます。
 ②のような「耳鳴り」を受容するためには、「耳鳴り」の音が小さくなる環境を整備します。まず、静かな環境を徹底的に避けます。入眠時など静寂では「耳鳴り」が際立つので、CDのリピート機能(自然音がオススメ)やラジオなど、小さな音が常にある環境を作ります。これの継続で受容できることも多いです。

 環境の調整だけでは受容が難しい場合、①を避けるため補聴器を装用します。聴力改善で脳の興奮を軽減する方法です。補聴器による音響療法を行っている耳鼻科で相談して下さい。

 

 (大阪府泉佐野市・極楽寺衆徒)

『本願寺新報』2020年5月20日号掲載