ワクチンの治験とは…/お悩みQ&A

ワクチンの治験とは…

ロシアが新型コロナウイルスワクチンを治験未完了で承認したというニュースを見ました。また日本の厚生労働省はアストラゼネカと新型コロナワクチン供給の合意をしたというニュースがありました。治験とはどのようなことをするのですか、供給されるワクチンは安全か教えてください

 

(44歳男性)

新しい薬など診療で使うための臨床試験

上野富雄〔川崎医科大学(岡山県倉敷市)主任教授 消化器外科〕

 気にされているのはロシアで認可された〝スプートニクV〟のことでしょうか。報道によると、認可の時点で安全性や効能を確認する最終段階の臨床試験はなお続けられている、とあります。
 もしこれが事実とすれば、ロシアが科学や安全性よりも国の威信いしんを優先していると懸念を抱かれても致し方ありません。治験とは、新しい薬や医療機器が国家の承認を得て一般の診療で使えるようにするために、客観的なデータを集めることを目的として、ヒトを対象(臨床試験)として行う研究です。
 治験には、第I相(フェーズIとも言います)、第Ⅱ相、第Ⅲ相があり、第Ⅰ相は「健康な成人」を対象として、薬がどのように吸収され、分布し、代謝され、排泄はいせつされるのか(薬物動態)をみることにより、薬の量決めをし、そしてどのような副作用(有害事象)があるのか、安全性はどうなのか、などについて検討します。
 第Ⅱ相は少人数の「患者さん」を対象に行う試験で、有効性に主眼をおきつつ、安全性・薬物動態などの検討をします。
 そして、より大人数(大規模)の「患者さん」で有効性の検証や安全性の検討が行われるのが第Ⅲ相です。したがって、最終段階の臨床試験はなお続けられているのに承認が得られていることは、西側諸国では通常あり得ません。西側諸国で供給されるワクチンは、基本的に安全性は高いはずです。一日も早いコロナ禍の収束を願っています。

 

 (大分県中津市・成満寺門徒)

『本願寺新報』2020年9月20日号掲載