新型コロナを怖がりすぎ?/お悩みQ&A

新型コロナを怖がりすぎ?

新型コロナウイルスの感染が恐ろしくて、帰宅したら手洗いだけでなく、シャワーを浴びて着替えないと落ち着きません。家の中でも手すりに触れると、消毒しないまま寝ることもできません。緊急事態宣言のニュースばかり見てしまっているせいでしょうか。手洗いやアルコール消毒をしすぎて手が荒れています。これはおかしいのでしょうか。

(44歳女性)

手洗いや消毒は必要な行為 生きるためには不安も必要

松向寺孝臣〔半田あったかクリニック(大阪府狭山市)院長 内科 老年精神科 心療内科〕

 新型コロナウイルスの報道から1年が経ち、この間、いろんな人のこころの弱さが見えてきたと思います。
 ご質問に対する回答をする前に、″強迫神経症"の症状について触れておきます。「ガスコンロの火を切ったかどうかわからない」「鍵をかけたかどうか確認する」などで何度も家に戻る。「ばい菌が気になってずっと手を洗ってしまう」などです。
 多かれ少なかれこういう観念にとらわれることはあるでしょうが、病気かどうかは生活や人間関係に支障をきたしているか否かで診断します。治療の方法としては、(脳内のセロトニンを安定させて増やすための)薬物療法と、精神療法(森田療法や認知行動療法)が一般的です。日常生活が「不快」と自覚されている状態ならば、専門の医療機関の門をたたくのもいいでしょう。
 ただ今回の質問において、手洗いやアルコール消毒は身を守るための必要な行為です。それ自体は励行されるべきことですので、注意を心掛けることは病気ではありません。新型コロナウイルスが怖いだけであれば、今後終息に向かえば、症状は改善していくでしょう。
 では何が問題かというと、新型コロナウイルスの感染におびえる″過剰な不安"です。不安の取り扱いについて助言するならば、不安が予期していたように的中することは非常にまれです。そして強調しておきたいのは、生きるためには不安も必要であるということです。
 生きるための不安を追い風にして成長していきましょう。

 

 (大阪市西成区・松向寺寺族)

『本願寺新報』2021年2月20日号掲載