医療と宗教の関係は必要…?/お悩みQ&A

医療と宗教の関係は必要…?

「医療従事者と宗教者が協力する関係が大切」と聞いたのですが、医療は科学の英知で病気を治すもので、宗教とは関係ないように思います。なぜ医療者と宗教者が協力する関係が大切なのか教えてもらえますか。

(35歳男性)

対人援助の医療に 普遍的宗教の視点を

田畑正久〔佐藤第二病院(大分県宇佐市)院長 外科・緩和ケア・老人科〕

 医療は対人援助の仕事ということができます。病気を抱えた人間を援助するということです。病気を治癒させることで解決のつく内容が多いでしょう。しかし、病気になることで、さまざまな悩み・不安が引き起こされます。病気を繰り返す人、慢性疾患と付き合っていかなければならない人、病気が死に結び付く人など、不安・悩みが尽きないことになります。
 人間は不安や悩みの苦を厭い、楽を願い求めます。問題は、苦から楽に向かっていくというその歩みが、どこまでいっても苦楽の世界を一歩も出ていないということです。これこそを、仏教で「苦」というのです。いかに順風な人生の人も、順境・逆境に関係なく老病死を免れることはできません。世界保健機関(WHO)の執行理事会が健康の定義にスピリチュアル(宗教、精神的)な要素を追加したのは、人生において必須の課題であるからでしょう。
 日本の医療界は医療が対人援助のサービス業と自覚しながら、宗教的援助だけは、患者一人一人の私的問題だとして無視する結果になっています。老病死の受け止めは人間にとって普遍的な課題であるはずなのに、多くの医療者は無宗教がいわゆるインテリ(知的階級)の矜持のように考えているのでしょう。日本の宗教事情があまりにも玉石混交で、宗教的目覚め、気づき、悟りにほど遠い宗教現象がマスメディアを賑わしているのも要因の一つでしょう。
 対人援助においては、「人間とは」、「人生とは」の全体像をより広く深く洞察する普遍的宗教の視点が大事ではないでしょうか。科学と宗教は補完的に機能することが願われます。

 (宇佐市・圓徳寺門徒)

『本願寺新報』2021年3月1日号掲載