頻繁に怒るのは認知症?/お悩みQ&A

頻繁に怒るのは認知症?

65歳の祖父は以前は優しく、怒った姿など見たことがなかったのに、最近は祖母に頻繁ひんぱん怒鳴どなるようになりました。認知症の症状に頻繁に怒るということがあるようですが、そうであればどのようにするのが最善でしょうか。 

(23歳男性)

怒りっぽくなるのは初期症状の可能性も

瀧本たきもと ゆたか〔愛仁会尼崎だいもつ病院(兵庫県)総合診療科 副院長〕

 認知症になると初期の頃から、周囲に攻撃的な発言をするようになり、怒りっぽくなる症状が出ることがあります。これを医学用語で「易怒性いどせい」と言います。認知症の行動・心理症状(周辺症状とも言われます)のひとつです。
 特に、アルツハイマー型認知症の場合、こうした人格の変化とも呼べる症状が、初期の頃から出現することもあり、家族が異変に気付くきっかけにもなります。
 認知症になると易怒性が出やすくなる理由として、①ストレスで混乱するため(記憶障害や日時や場所、人物など周囲の状況が理解できずに混乱することでイライラする)、②体調不良のため(不眠、便秘、脱水などの体調不良を上手く伝えることができず、怒りにすり替わっている可能性がある)、③薬の副作用のため(認知症の治療に用いられるドネペジル塩酸塩はよく用いられる薬ですが、副作用で易怒性が出てくる場合があります)の3つが主に挙げられます。
 易怒性への対応ですが、まずは安心できる環境を整え、本人がわかりやすいようにゆっくりと話しましょう。そして、本人を否定したり一緒になって怒ったりするのは避けましょう。また、介護されるのを嫌がる時には、無理にやろうとはせずに時間を置くことも大切です。それでも効果がない場合、易怒性を改善させる薬を使用する必要があるかどうかも含め、医師に相談をしてみましょう。
 怒りから暴力に発展するような場合には、早急にケアマネジャーや地域包括支援センターに相談をしてください。

『本願寺新報』2021年3月20日号掲載