燃えてないのに「燃えている」これは病気でしょうか?/お悩みQ&A

燃えてないのに「燃えている」これは病気でしょうか?

夫が突然「本棚が燃えている」と言うので、驚いて本棚を見にいったのですが、燃えている様子はありません。夫は幻覚を見ているのでしょうか、それとも何かの病気なのでしょうか。

(70歳女性)

「レビー小体型認知症」かも 脳神経内科での診察検査を

瀧本たきもと ゆたか〔愛仁会尼崎だいもつ病院(兵庫県)総合診療科 副院長〕

 高齢者の精神症状の中で幻覚は頻繁ひんぱんに認められますが、特に幻視げんしは臨床場面でしばしば遭遇そうぐうする病態です。幻視は脳血管障害や認知症に伴いやすく、幻聴が特徴である統合失調症とは大きく異なっています。
 高齢者において幻視を認める病気で代表的なものに「レビー小体型しょうたいがた認知症」があります。レビー小体と呼ばれる異常なたんぱく質が脳内に作られることで、正常な神経細胞が壊されてしまい発症します。
 この認知症の初期には、もの忘れよりもはっきりと見える幻視(「壁にネズミの顔が見える」「窓の外から子どもがこっちを見ている」など)が見られるのが特徴です。また、小刻み歩行や身体の動きが緩慢かんまんになるなど、パーキンソン病のような症状も見られます。さらに睡眠時の異常言動を伴うことも特徴的で、眠っている間に大声で叫んだり、怒鳴ったり、奇声をあげたり、暴れたりすることがあります。これをレム睡眠中に起こしやすいことから、レム睡眠行動障害といいます。
 診断には臨床症状のほかに核医学検査・シンチグラフィー検査(脳血流、ダットスキャン、MIBG心筋シンチなど)において異常所見が認められることが補助となります。治療としては抗認知症薬(ドネぺジル)や、幻視には非定型抗精神病薬(保険適応外)の少量投与が有効なことがあります。
 もちろん、幻覚症状が表れる病気はレビー小体型認知症だけではありませんので、脳神経内科での診察をお勧めいたします。

『本願寺新報』2021年6月1日号掲載