「お薬手帳」は必要?/お悩みQ&A

「お薬手帳」は必要?

父(73歳)は高血圧症と糖尿病を患っており、それぞれ異なる医院で診てもらっています。先日、付き添いで医院につれていき、薬局で薬を受ける時、薬剤師さんから「お薬手帳」の提示を求められました。持っていなかったのでお薬だけもらいました。医師の処方を、薬剤師さんに注意してもらう必要があるのでしょうか。

(38歳女性)

薬の組み合わせに注意 危険回避のために必要

一石いちいし 英一郎えいいちろう〔国際医療福祉大学病院(栃木県)内科/予防医学センター 教授〕

 最近では、いくつかの診療所やクリニックで薬を処方してもらう人が増えています。Aクリニックでは血圧の薬を、B診療所では糖尿病に対して血糖コントロールの薬、C外科で骨粗鬆こつそしょう症の治療のための薬、というようにです。
 最善の治療のためには、複数の病院で専門の医師に診てもらうことは、もちろんよい効果を目指してのことなのですが、それぞれで処方薬をもらうと、手もとで整理が付かなくなってしまい、薬の組み合わせによっては危険な場合もあるので注意が必要です。
 その際に有効なのが「お薬手帳」なのです。実際に調剤薬局で薬を受け取るとき、薬剤師さんが「危険な組み合わせ」を回避するために、指摘することもできます。また最近では、スマートフォンアプリの「お薬手帳」もあり、重複処方に対して注意を促してくれるものもあるようです。
 質問者は、糖尿病と高血圧症を別々の病院で受診され、それぞれで処方を受けておられます。これらの薬は飲み合わせで脱水を引き起こすことがあり、別々の病院で処方されていると気付かない危険性があります。
 さらに薬によっては飲み合わせで食欲不振が起こる副作用に応じて、気付かずに胃腸薬が重複して処方されてしまう可能性もあります。
 薬の処方を受ける場合は、飲んでいる薬名を「お薬手帳」にすべて記録し、薬局に持参することをお勧めします。そして気になることがあれば処方している薬局の薬剤師に「お薬手帳」を見せてご相談ください。「かかりつけ薬剤師」の制度もお勧めです。

『本願寺新報』2021年10月10日号掲載